おはようございます

今日も引き続きST変化を伴う心電図のお勉強しましょう
今日は早期再分極症候群のお話です

次の心電図を読んでみましょう
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心拍数は1500÷15=100/分
Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導でP波は陽性
Ⅱ誘導の流れを見ていくと、PQ時間は一定
P・QRS波は1対1の関係です。
洞性頻脈ですね。


PQ時間は0.16秒で正常

QRS波は0.10秒で正常です。

電気軸は正常
移行帯はV3誘導にあります。

心電図変化を見ていきましょう。
Ⅰ、Ⅱ、V6誘導のQRS波の終末部がいつもと違う形なのがわかりますか?
またⅢ、aVF誘導、V4V5誘導ではQRS波の終末部の形が変わっていますね。

今回のポイントはQRS波終末部の変化です

早期再分極症候群とは
健康な若年者においてJ点やST上昇はしばしば出現しており、この心電図変化を早期再分極といい従来は良性変化と考えられていました。
このJ点上昇をJ波といいます。
J点
下壁、側壁誘導での0.1mV以上のJ点上昇を認める頻度は1-24%とされ、運動選手での頻度は23-44%とも報告されています。
1990-2000年代に突発性心室細動を発症した患者さんの安静時心電図に高頻度でこのJ波が存在することが指摘され、突然死の原因として注目されるようになりました。

現在ではST上昇の有無によらずJ点の高さが重要視されています。
また遺伝子研究の進歩によりJ波症候群として早期再分極症候群とともに昨日お話したブルガダ症候群も含める考えが提唱されています。

狭義の早期再分極症候群は、
下壁・側壁誘導において早期再分極型心電図かつ心停止や心室細動、多形性心室頻拍の既往があるものの、ほかに心室性不整脈の原因がないもの
と定義されています。
心電図変化として、
①ST部分の上昇にかかわらず、QRS終末にノッチ型もしくはスラー型のJ波を認める
J波
②V1~V3誘導以外の連続した2つ以上の誘導においてQRS終末に0.1mV以上のノッチ型もしくはスラー型のJ波を認める
③ノッチやスラーを伴わない誘導におけるQRS幅が120ms未満

今回の心電図でも
Ⅰ、Ⅱ、V6誘導でスラー型のJ波
Ⅲ、aVF、V4V5誘導でノッチ型のJ波が確認できますね。

スラー型よりもノッチ型で心室性不整脈リスクが高いとされています。
この心電図変化の成因は心室壁内のイオンチャンネル分布が不均一であり、この分布の差により心外膜における活動電位第2相の陰性のノッチが大きくなることで心外膜側と心内膜側に電位差が生じJ波が出現すると考えられています。
また早期再分極症候群に関連した遺伝子変異は7つ同定されています。
早期再分極症候群における心筋イオンチャンネルの機能変化は活動電位の第0-2相の内向き電流の減少もしくは外向き電流の増加をきたすものがほとんどです。
この遺伝子変異はすべてブルガダ症候群でみられる遺伝子変異と重複しています。

早期再分極症候群では、下側壁誘導に近接した2誘導以上で0.1mV以上のJ点上昇+心停止や持続性心室頻拍の既往があれば植え込み型除細動器の適応となります。
また若年突然死の家族歴が存在する場合も植え込み型除細動器の考慮対象となります。


今日は早期再分極症候群についてお話ししました
最後まで読んでいただきありがとうございました