おはようございます

先日から今までの復習もかねて12誘導心電図を読み、12誘導心電図を見たときの対応についてお話しています

今日も心電図を読んでみましょう

74歳男性
胸痛・動悸が出現しました

IMG_20190114_155347

心拍数は1500÷8=187/分
Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導でP波はQRS波の前にありません。
Ⅱ誘導のリズムストリップをみていくとP波はS波と重なっている逆行性P波にみえます。
QRS波は0.20秒と延長しています。
V1誘導は通常の右脚ブロックとは異なる形をしています。
Ⅰ誘導、aVF誘導で軸偏位を確認すると-27度の左軸偏位です。


この心電図は心室頻拍です。


心室頻拍・VT
HR100/分以上で心室性期外収縮が3連発以上の続くものと定義されます。
QRS幅は0.12秒以上、RR間隔が一定になります。

心室頻拍には
波形による分類として
単形性心室頻拍:頻拍中のQRS波形が一定
多形性心室頻拍:頻拍中のQRS波形が変化する
TdP:QRSの極性がねじれるように変化する多形性心室頻拍の特殊例
持続時間による分類として
非持続性心室頻拍:30b秒以内に自然停止
持続性心室頻拍:30秒以上持続、または30秒以下であっても停止処置が必要なもの
基礎心疾患の有無として
特発性心室頻拍:基礎心疾患がなく、心機能低下もない
続発性心室頻拍:基礎心疾患に合併する
分類があります。

心室頻拍は基礎心疾患の有無により危険性が大きく左右されます。
基礎心疾患に合併する続発性心室頻拍では突然死の原因になることもあり、非持続性心室頻拍でも積極的な治療が必要となります。
この基礎心疾患には
虚血性心疾患
拡張型心筋症
肥大型心筋症
不整脈原生右室心筋症
二次性心筋症
先天性心疾患などがあげられます。
基礎心疾患に伴い障害心筋が緩徐伝導部位を形成し、リエントリーを生じて心室頻拍が生じることがあります。

今回の心電図のように、逆行性P波があると変更伝導を伴った上室性頻拍症との鑑別が難しいです。
以前の心室頻拍で説明しましたが、心室頻拍の診断には、
①房室解離
②融合収縮
が確認できればスムーズです。
しかし今回の心電図では房室解離・融合収縮は確認できません。
このような場合には、QRS波形の特徴から鑑別します。
①胸部誘導でR波を認めずすべてQS波形
②胸部誘導のRSパターンでRS間隔が0.10秒以上
③右脚ブロック波形でV1誘導でQR、RS波形
④右脚ブロック波形でV6誘導でR<S
⑤左脚ブロック波形でV1誘導でRS間隔が0.06秒以上
⑥左脚ブロック波形でV6誘導でQR,QS
今回の症例では④があてはまります。またV1誘導のQRS波形が通常の右脚ブロックとは異なることもポイントです。
心室頻拍でも逆行性P波に見えるようにP波が出現することもあり、鑑別に注意が必要な症例です。

対応
バイタルサインとともにDrへ緊急連絡、心室頻拍を停止するための処置が必要になります。
血行動態が不安定な場合にはカルディオバージョン
血行動態が安定している場合には薬物治療
が必要となります。
またその後再発予防として内服治療の継続や、カテーテルアブレーションを要することもあります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました