おはようございます

今までの復習もかねて12誘導心電図を読み、12誘導心電図を見たときの対応についてお話しています現在は週1回日曜日に更新しています。

では心電図を読んでみましょう

42歳女性
胸痛、呼吸困難を訴えています。

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心室性不整脈が出現していますが、洞調律部分の心拍数は1500÷17=88/分です。
Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導でP波は陽性
Ⅱ誘導のリズムストリップをみていくと心室性不整脈以外の部分ではP波、QRS波は1対1の関係
PQ間隔は0.12秒
QRS波は0.08秒
その他の心電図変化を見ていきます。
Ⅱ誘導のリズムストリップを見ていくと、
2-5拍、9-12拍、17-19拍の波形が変化していることがわかります。
QRS波は0.12秒で延長しています。
またP波がQRS波の中に確認できます。
房室解離です。
QRS波は1500÷8=187/分で出現しています。
Ⅰ誘導とaVF誘導で軸偏位を確認すると+106度の右軸偏位です。


この心電図は非持続性心室頻拍、急性肺塞栓疑いです。


心室頻拍
100/分以上の心拍数で心室期外収縮が3連発以上続くものと定義されます。
QRS波は0.12秒以上
RR間隔は一定です。

心室頻拍の発生機序は
①リエントリー
②異常自動能
③撃発運動

今回の症例のように頻拍中のQRS波が一定の場合を単形成心室頻拍
頻拍中にQRS波形が変化するものを多形性心室頻拍といいます。
また多形性心室頻拍のなかでQRSの極性がねじれるように変化するものをTdPといいます。

基礎心疾患の有無でも呼び方が変わり、基礎心疾患に合併する場合を続発性心室頻拍
基礎心疾患がなく心機能低下もないものを特発性心室頻拍といいます。

心室頻拍の危険性は基礎心疾患の有無に大きく左右されます。
特発性心室頻拍は血行動態が破綻せず生命予後も良好なことが多いのですが、続発性心室頻拍の場合突然死の原因になることがあり、30秒以内の非持続性心室頻拍の場合でも積極的な介入が必要となります。
この基礎心疾患には
虚血性心疾患
拡張型心筋症
肥大型心筋症
不整脈原生右室心筋症
二次性心筋症
先天性心疾患などがあげられます。
基礎心疾患に伴い障害心筋が緩徐伝導部位を形成し、リエントリーを生じて心室頻拍が生じることがあります。

心室頻拍の診断には、
①房室解離
②融合収縮
が確認できればスムーズです。

房室解離・融合収縮が確認できない場合にはQRS波形の特徴から鑑別します。
Brugadaらの報告では、
①胸部誘導でR波を認めずすべてQS波形
②胸部誘導のRSパターンの誘導でRS間隔が0.10秒以上
③右脚ブロック波形でV1誘導でQR、RS波形
④右脚ブロック波形でV6誘導でR<S(R>Sは上室性を示唆)
⑤左脚ブロック波形でV1誘導でRS間隔が0.06秒以上(S波の下降がなだらか)S波にノッチ
⑥左脚ブロック波形でV6誘導でQR,QS
とされていますが、今回の症例でははっきりしません。

急性肺塞栓
肺動脈が血栓により閉塞し、肺循環障害から肺組織の壊死を生じるものです。
急速な右心負荷が出現するため心電図変化が出現します。

心電図変化の特徴は
①頻脈
②不完全右脚ブロックまたは右脚ブロック
③SⅠQⅢTⅢ
④右軸偏位
⑤下壁・前壁中隔誘導の陰性T波
があげられます。

広範囲の肺塞栓に伴い、急性の右室負荷・右室拡大を起こします。
そのため不完全または完全右脚ブロックが生じます。
また右脚ブロックを伴わない場合もありますが、⑤のようにV1-V4誘導の陰性T波として出現することもあります。
右室負荷に伴い右房まで影響する場合には肺性P波が出現することもあります。
④のSⅠQⅢTⅢとは、Ⅰ誘導に深いS波、Ⅲ誘導に深いQ波、陰性T波を認めるもののことをいいます。
この変化も急速な右心負荷を反映するものですが、発生頻度は10-15%なうえ多くは24時間以内に消えてしまう所見です。
頻脈は肺塞栓を発症した場合1/2以下に出現します。
また今回の症例では出現していませんが完全右脚ブロックか右脚ブロックに下壁・前壁中隔誘導の陰性T波が合併している場合、肺塞栓の特異度が上がります。
Ⅲ誘導以外の下壁誘導にT波変化がなく前壁中隔誘導のみのT波陰転化は感度が高くなります。

対応
急性肺塞栓の疑いがあるため、緊急で造影CTを施行し確定診断を行う必要があります。バイタルサイン、呼吸状態とともにDrへ緊急報告しましょう。患者さんには心電図モニターを装着します。また下肢静脈血栓の有無もエコーなどで行うことがあります。肺塞栓の程度により内服か点滴で抗血栓療法が開始されることになりので、必要時ルート確保、輸液ポンプ、シリンジポンプの準備を行いましょう。安静度をDrへ確認し、対応していきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました