おはようございます

今までの復習もかねて12誘導心電図を読み、12誘導心電図を見たときの対応についてお話しています現在は週1回日曜日に更新しています。

では心電図を読んでみましょう

42歳男性
胸痛を訴え受診しました。
148

心拍数は1500÷14=107/分
Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導でP波は陽性
Ⅱ誘導のリズムストリップをみていくとP波、QRS波は1対1の関係
PQ間隔は0.12秒
QRS波は0.08秒
その他の心電図変化を見ていきます。
四肢誘導ではⅠ、Ⅱ、aVL.aVF誘導にてPR低下、ST上昇
胸部誘導ではV5V6誘導のST上昇を認めます。


この心電図は急性心膜炎です。


急性心膜炎
心膜、心外膜、心外膜下層心筋の炎症性変化です。
感染
自己免疫疾患
心筋梗塞後
腫瘍
外傷
手術後など多数の疾患が原因になって生じますが、特発性のことも多いです。

4つの診断基準のうち2つ以上を認めると心膜炎と診断されます。
①心膜炎に特徴的な胸痛
→胸痛は突然始まり、数時間で治まるものから数週間続くものもあります。
痛みは鋭く、胸骨裏面から左前胸部にかけて生じることが多く、仰臥位で増強し座位で軽減します。
②心膜の摩擦音
③心膜炎を示唆する心電図変化
心膜炎の心電図変化は期間により異なります。
・発症後、数時間~数日
広範囲のST上昇
心電図の特徴的な変化は冠動脈領域支配と関係ない広範誘導におけるST上昇です。
このST上昇は早期再分極同様に上に向かって凹型のST上昇がみられます。炎症のある心外膜領域に対応する広範囲ST上昇が起こります。
急性心筋梗塞と異なり対側性のST低下は認めません。今回の症例でもST低下は認めていません。
また異常Q波も出現しません。
心房まで炎症が広がっているとaVR誘導のPR上昇(それに伴いその他の誘導でPR低下)

PRとはPR部分のことをいいます。
PR部分
今回の症例においてもPR低下を認めます。
・数日~1週間

上昇していたSTが基線復帰⇒T波の平坦化、陰転化⇒正常心電図へ戻る
④心嚢液の新規発症または増加
心嚢水の増強で心タンポナーデを伴えば電気的交互脈や低電位も出現することがあります。

今回の症例では①胸痛、③心電図変化を認め、急性心膜炎と診断されますが、心エコーを使用し心嚢液増強の有無や心タンポナーデの有無を確認する必要があります。

胸痛の原因は、心筋炎合併の場合もあります。
心筋炎を合併すると心室頻拍や心室性不整脈を伴うこともあるので、心電図変化に注意が必要です。


対応
急性心膜炎が疑われる心電図変化なので、Dr報告が必要です。患者さんにはモニター装着を行いましょう。また急性心膜炎では心嚢液貯留を認めることが多いため心エコーで確認する必要があります。心エコーの準備も必要です。心嚢水貯留量が多ければ心タンポナーデに移行する場合もあり、心嚢ドレナージなど行う可能性も考えておきましょう。胸痛に対してはDr指示のもと鎮痛剤内服をしていきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました