おはようございます
今までの復習もかねて12誘導心電図を読み、12誘導心電図を見たときの対応についてお話しています現在は週1回日曜日に更新しています。
…が、昨日娘が朝早く起きてしまいお昼寝せず…。
月曜日更新となりました
では心電図を読んでみましょう
86歳女性
認知症既往のある患者さん。2日前に近医を退院。
その後徐々に呼吸困難増強、下肢浮腫が出現したため、救急要請しました。
心拍数は1500÷43=34/分
Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導でP波は陽性
Ⅱ誘導をみていくとP波、QRS波は1対1の関係ではありません。
QRS波は0.08秒
その他の心電図変化を見ていきます。
四肢誘導ではすべての誘導が0.5mV以下のため、低電位です。
胸部誘導R波が0.2mVのため、R波増高不良です。
この心電図は完全房室ブロック、四肢誘導の低電位、R波増高不良です。
完全房室ブロック
心房心室間の伝導が完全に途絶した状態です。
Ⅲ度房室ブロックとも言います。
心房からの興奮が遮断されるため、下位刺激伝導系の自動能が働き補充調律が出現します。
QRS波は出現していますが、P波とは関係なくバラバラに出現しています。
完全房室ブロックは下壁梗塞や前壁梗塞に合併することがあります。
下壁梗塞の場合は房室結節の障害のために発生するため一時的な房室ブロックですが、前壁梗塞の場合は両脚ブロックとなり永続的なことが多いとされています。
今回の心電図ではR波増高不良も認め、前壁中隔梗塞の疑い考える必要があります。
心筋梗塞に合併しない場合は遠位伝導系の硬化変性疾患か房室弁輪や関連組織の石灰化による伝導途絶が代表的とされています。
先天性に発症することもありますが、後天性では上記とリウマチ熱やウイルス性心筋炎などの感染症で出現することもあります。
心電図の特徴は房室結節からの補充調律であれば通常と同じQRS波になります。
今回の心電図でもQRS波は0.08秒と正常範囲のため、房室結節~ヒス束間において補充調律が出現していることが考えられます。
ヒス束以下では幅広いQRS波になります。
いずれも先行するP波はありません。
心拍数は房室結節40/分程度、ヒス束やプルキンエ線維では30/分程度の補充調律のため、失神や、めまい、ふらつきなどの症状が出現します。
ペースメーカーの適応となり、挿入まで一時的な薬物療法を用いて心拍数を確保します。
低電位
QRS波の振幅が異常に低下している状態をいいます。
定義として、
四肢誘導全部が0.5mV未満を四肢誘導の低電位差
胸部誘導全部が1.0mV未満を胸部誘導の低電位差
心電図は心臓の電気の流れをそれぞれの目で見ています。
低電位では、
①心臓の起電力が低下している場合
②心臓の起電力は正常でも、心電図上に反映されていない場合
が考えられます。
原因としては、
①心臓の起電力の低下
広範囲の心筋梗塞、急性心筋炎、心アミロイドーシスなど
②心電図上に反映されない
肥満、胸水貯留、心嚢液貯留、肺気腫、四肢の浮腫など
があげられます。
今回の症例ではレントゲン上多量の胸水を認めました。四肢の浮腫もあるため、それらが原因となり低電位になっていることが考えられます。
R波増高不良
R波増高不良はV1-V3誘導のR波がV1誘導とほとんど変わらないものを言います。
本来あるべきR波が減高している疑いがあると考え前壁中隔梗塞の疑いを考えなければいけません。
12誘導心電図を読む際はV3誘導のR波が0.3mV以下の場合確認を行います。
ただしこの心電図変化のみでは正常なことも多く下記のような疾患、状態によっても出現します。
左室肥大
慢性閉塞性肺疾患
急性肺性心
心筋症
二次性心筋症
胸郭変形
対応
心電図変化に加え、心不全徴候を認めます。
患者さんは緊急入院し、まず心不全治療として利尿剤投与、補液管理が開始されました。
認知症の既往があり、ドネペジルを内服していたため、副作用の一つとして完全房室ブロックが懸念されたため、内服を中止、徐脈改善のためプロタノール持続投与が行われました。
この患者さんはドネペジル中止、プロタノール投与に伴い完全房室ブロックが消失したため、ペースメーカーは挿入しませんでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
今までの復習もかねて12誘導心電図を読み、12誘導心電図を見たときの対応についてお話しています現在は週1回日曜日に更新しています。
…が、昨日娘が朝早く起きてしまいお昼寝せず…。
月曜日更新となりました
では心電図を読んでみましょう
86歳女性
認知症既往のある患者さん。2日前に近医を退院。
その後徐々に呼吸困難増強、下肢浮腫が出現したため、救急要請しました。
Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導でP波は陽性
Ⅱ誘導をみていくとP波、QRS波は1対1の関係ではありません。
QRS波は0.08秒
その他の心電図変化を見ていきます。
四肢誘導ではすべての誘導が0.5mV以下のため、低電位です。
胸部誘導R波が0.2mVのため、R波増高不良です。
この心電図は完全房室ブロック、四肢誘導の低電位、R波増高不良です。
完全房室ブロック
心房心室間の伝導が完全に途絶した状態です。
Ⅲ度房室ブロックとも言います。
心房からの興奮が遮断されるため、下位刺激伝導系の自動能が働き補充調律が出現します。
QRS波は出現していますが、P波とは関係なくバラバラに出現しています。
完全房室ブロックは下壁梗塞や前壁梗塞に合併することがあります。
下壁梗塞の場合は房室結節の障害のために発生するため一時的な房室ブロックですが、前壁梗塞の場合は両脚ブロックとなり永続的なことが多いとされています。
今回の心電図ではR波増高不良も認め、前壁中隔梗塞の疑い考える必要があります。
心筋梗塞に合併しない場合は遠位伝導系の硬化変性疾患か房室弁輪や関連組織の石灰化による伝導途絶が代表的とされています。
先天性に発症することもありますが、後天性では上記とリウマチ熱やウイルス性心筋炎などの感染症で出現することもあります。
心電図の特徴は房室結節からの補充調律であれば通常と同じQRS波になります。
今回の心電図でもQRS波は0.08秒と正常範囲のため、房室結節~ヒス束間において補充調律が出現していることが考えられます。
ヒス束以下では幅広いQRS波になります。
いずれも先行するP波はありません。
心拍数は房室結節40/分程度、ヒス束やプルキンエ線維では30/分程度の補充調律のため、失神や、めまい、ふらつきなどの症状が出現します。
ペースメーカーの適応となり、挿入まで一時的な薬物療法を用いて心拍数を確保します。
低電位
QRS波の振幅が異常に低下している状態をいいます。
定義として、
四肢誘導全部が0.5mV未満を四肢誘導の低電位差
胸部誘導全部が1.0mV未満を胸部誘導の低電位差
心電図は心臓の電気の流れをそれぞれの目で見ています。
低電位では、
①心臓の起電力が低下している場合
②心臓の起電力は正常でも、心電図上に反映されていない場合
が考えられます。
原因としては、
①心臓の起電力の低下
広範囲の心筋梗塞、急性心筋炎、心アミロイドーシスなど
②心電図上に反映されない
肥満、胸水貯留、心嚢液貯留、肺気腫、四肢の浮腫など
があげられます。
今回の症例ではレントゲン上多量の胸水を認めました。四肢の浮腫もあるため、それらが原因となり低電位になっていることが考えられます。
R波増高不良
R波増高不良はV1-V3誘導のR波がV1誘導とほとんど変わらないものを言います。
本来あるべきR波が減高している疑いがあると考え前壁中隔梗塞の疑いを考えなければいけません。
12誘導心電図を読む際はV3誘導のR波が0.3mV以下の場合確認を行います。
ただしこの心電図変化のみでは正常なことも多く下記のような疾患、状態によっても出現します。
左室肥大
慢性閉塞性肺疾患
急性肺性心
心筋症
二次性心筋症
胸郭変形
対応
心電図変化に加え、心不全徴候を認めます。
患者さんは緊急入院し、まず心不全治療として利尿剤投与、補液管理が開始されました。
認知症の既往があり、ドネペジルを内服していたため、副作用の一つとして完全房室ブロックが懸念されたため、内服を中止、徐脈改善のためプロタノール持続投与が行われました。
この患者さんはドネペジル中止、プロタノール投与に伴い完全房室ブロックが消失したため、ペースメーカーは挿入しませんでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
コメント
コメント一覧 (3)
忘れたことにやってくるって感じですかね〜。
ただ、最近はいろんな認知症の薬剤が新たに発売されているからか、肌感覚としては少し減ってきている印象です。
勉強になりました!
EIJIさん、コメントありがとうございます
私も徐脈を認めたとき、内服確認でどうしてもβ遮断薬ばかり探してしまいます訪問診療に移動し、直接心電図をその場で確認できないことが多く、内服薬の勉強をしっかりしなければいけないと感じた症例でした。
新しい薬剤は出てくるし、先発品や後発品が混じって、
整理するのが大変ですよね。
最近は記録力が落ちてきて、辛いです。。。
次回の更新も楽しみにしています!