おはようございます

今までの復習もかねて12誘導心電図を読み、12誘導心電図を見たときの対応についてお話しています

では心電図を読んでみましょう

71歳男性
失神後覚醒、軽度の胸痛を訴えています。
165

心拍数は1500÷16=93/分
Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導でP波は陽性
Ⅱ誘導のリズムストリップをみていくとP波、QRS波は1対1の関係
PQ間隔は0.22秒、延長しています。
Ⅰ度房室ブロックです。
QRS波は0.08秒
その他の心電図変化を見ていきます。
四肢誘導では、Ⅰ・aVL誘導でST低下
またaVL誘導ではR波が1.2mV以上です。
Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導でST上昇
ST上昇がⅡ<Ⅲ誘導
胸部誘導ではV1,V2誘導のST低下を認めます。


この心電図は急性下壁梗塞、後壁梗塞・右室梗塞疑い、Ⅰ度房室ブロック、左室肥大です。


急性下壁梗塞・後壁梗塞・右室梗塞

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Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導のST上昇、Ⅰ,aVL誘導のST低下より下壁梗塞
またV1-V2誘導のST低下は後壁梗塞によるST上昇のミラーイメージの可能性があります。
鏡面像


後壁梗塞は
後壁の反対側である右側前胸部誘導V1V2誘導に
①R波の増高→異常Q波の鏡面像
②陽性T波→冠性T波の鏡面像
で確認をします。

今回の症例ではR波の増高のみ、冠性T波は認めません。
今後12誘導心電図を施行すると出現している可能性もあります。


急性下壁梗塞の約1/3に生じます。
死亡率の増大に関連するため、右室梗塞の診断はとても大切になります。

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右室梗塞を疑う心電図所見は、
①Ⅱ誘導よりⅢ誘導のST上昇が著明
②ミラーイメージとして右側前胸部誘導のST低下が通常伴うところ、V2誘導に限定されV1誘導は上昇または平坦な場合
今回の症例では①が確認できます。
右室を栄養している冠動脈は右冠動脈です。
冠動脈1

右冠動脈は、洞結節や房室結節、右室、左室下壁、心室中隔の一部を灌流しています。
そのため右冠動脈近位部の閉塞が起こった場合は、右室壁と左室下壁が虚血・梗塞に陥ります。

右室の心筋は左室の心筋に比べ少ないため、梗塞が起きても心電図変化が少ない、つまりST変化が軽微なことが多いのも特徴です。
そのため通常の12誘導心電図に加えて、右側前胸部誘導の心電図を施行や、心エコーで確認することも必要となります。

心電図変化は少なくても、身体に及ぼす影響は大きく、
右心室の梗塞により右心不全症状が悪化すると、右心室のポンプ機能低下によって肺~左心系への十分な血流が送れなくなり、最終的に心拍出量の低下を招きます。
その結果、低心拍出量症候群・血圧低下などを生じます。
心拍出量、血圧維持のために循環血液量を増やすため輸液量を増やす必要があります。

Ⅰ度房室ブロック
房室伝導の障害により興奮の伝導が遅延し発生します。

心電図の特徴は
①PQ間隔が0.20秒以上に延長
②連続した心拍においてPQ間隔は変動しない
③心室興奮は脱落することがない

器質的心疾患を伴わないことが多いです。
若年者では迷走神経緊張による出現することもあり最終的に元に戻ります。
加齢現象としても出現します。
以前の心電図と比べる必要がありますが、今回の症例では右冠動脈病変に伴いⅠ度房室ブロックが出現していることが予想されます。

左室肥大
左室にかかる圧や容量の負荷により心肥大が起きている状態です。
左室から血液を送り出すときに通常以上の力が必要になることで、左室壁の肥厚が起こることを言います。

疾患では
高血圧→血管の圧が高いために、心臓から血液を送り出すのに力が必要になります
大動脈弁狭窄→左室から全身に送り出す弁が狭くなっていると送り出すための力が必要になります。

心電図上では左室壁の肥厚により左室にかかる電気も大きくなります。
これを左室高電位といいます。

左室高電位の基準は
①V5V6誘導のR波の高さが2.6mV以上
②Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導のいずれかのR波が2.0mv以上またはaVL誘導のR波が1.2mV以上
③V1誘導のS波とV5誘導のR波を足すと3.5mV以上
今回の症例では②のaVL誘導のR波増高が確認できます。

左室肥大の定義は
①左室高電位
②QRS波の軽度延長
③ストレイン型ST-T変化

対応
急性心筋梗塞ですので、緊急カテーテル対応が必要となります。
ベッド上安静、心電図モニター装着、ルート確保を早急に行い、剃毛や尿道カテーテル挿入など緊急カテーテルの準備を行いましょう。
現在軽度の胸痛ですが、胸痛増強時には対症療法も必要となります。
心電図変化、胸部症状の観察を行いながらカテーテル準備を進めていきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました